その日は、ハレの日にふさわしい晴天だった。海の見えるチャペルが有名なその式場に、先輩たちと一緒に足を踏み入れる。通された待合フロアからも青々とした海が見えて、水面がきらきらと光っていた。
まだ、来てないのかな。
きょろきょろと周りを見回して、手で髪を整え直す。最後に会ったのがあんな形だったことよりも、今の自分の見た目が気になってしょうがなかった。
美容院に行ったし、マツエクにも行ったし、ネイルにも行った。あんな浮気男、と思う気持ちよりも、もう一回素直に話せたらと期待する気持ちの方が強かった。
先輩たちのあとをついて、受付でご祝儀を手渡す。後輩ちゃんの友人らしき女の子が手渡してくれた席次表を、フロアの隅でこそこそと開いた。
新郎後輩・宮治。うん、いるよね。いるに決まってるよね。いないわけがないよね。
ぼんやりと席次表を眺めていると、彼の名前の隣に、もうひとつ似たような名前が記載されていることに気がついた。
新郎後輩・宮侑。
おにぎり宮に置いてあったサインを思い出す。そういえば、ご兄弟がバレーボールの選手だって言っていたっけ。
待って? ご兄弟も北さんの後輩?
ってことは、えっと、治くんが北さんのひとつ年下だから……。ん? ご兄弟って、弟なのかな? 年子? うーん……。
そんなことをだらだらと考えていた時だった。「◇◇ちゃん!」と大きな声が聞こえ、はっ、と顔を上げる。そこにいたのは、スーツ姿の治くん。……と、その隣にそっくりな顔の金髪男性が立っていた。
「おっ、治くん……!?」
「久しぶりやな……」
一瞬場がしーんと静まって、隣の男性が「あーっ! もう! なんやねんサム! じれったいんやアホ!」と叫んだ。えっと、この人はたぶん……。
「◇◇ちゃん。紹介するな。俺の双子の兄弟の侑」
「えっ!?」
「兄弟おる言うてたやろ? ちなみに一卵性や」
「双子だとは聞いてない……」
「せやな……」
「ちょ、ちょっと待って! じゃあ、あの時見たのは……」
「侑と彼女やな」
「でも髪の色……!」
「なんやイベントのために黒くしとったんやて」
まさか。まさかの彼氏とその兄弟を見間違えてしまうなんて! 穴があったら入りたい。ていうか謝り倒したい。
「ごっ、ご、ごめんなさ……!」
「◇◇ちゃんのせいやあらへん! 俺が言うてへんやったから!」
「でも……、私が……」
「ミョウジちゃーん! 式始まっちゃうよー!」
先輩から声をかけられ、はっと顔をあげる。治くんはじっと私を見つめて、「あとで話そか」と優しく笑った。
ああ、やっぱり好きだなぁ、って思わされる。式場に向かう途中、治くんと侑さんを見比べたけれど、今の私には全然違って見えた。治くんがいい。治くんじゃないといやだ。同じ顔の兄弟がいたって、それは変わらない。あの優しい声に、温度に、恋愛になると臆病なところに、恋をしたんだから。
あとできちんと話そう。そして、ちゃんと謝るんだ。
そう決めて、チャペルの中へと足を踏み入れた。