おにぎり屋の宮さん15

〜side OSAMU〜

『◇◇ちゃん、誤解やねん。一度会って話そ』

 既読になったりならなかったりするメッセージは、俺からの一方的なものだった。彼女からの返事は来ない。同じ内容のメッセージを送り続けて早や二週間。俺は閉店後の店内のカウンターに突っ伏して、はぁ、と深い溜息をついた。

「せやからごめんってなんべんも言っとるやん」

 頭上から降ってくるのは、自分とよく似た声。ぎろりと睨みつけながら上を向けば、同じ顔をした兄弟が手を合わせて謝っていた。

「よりによって何であの時黒髪やねん……」

「あれな、メテオアタックって漫画とのコラボ試合があってな! キャラと同じ髪色にしてん」

「あの子とはどうなってん?」

「おかげさまでラブラブやで?」

 ええな、侑は俺と違ってぐいぐい行くからな。そう思った。

 ◇◇ちゃんのことになると自分でもびっくりするくらい臆病で、情けなくて、積極的になれない俺がいた。目の前にいる兄弟とは顔は同じだけれど、そういうところは全然違う。俺が勇気振り絞って告白した子やぞ、とは言えなかった。お前昔はチャラかったやん、と笑われるのが目に見えているからだ。

「彼女から返事来ぃひんの?」

「……おん」

「あちゃー、すまんな」

「随分と他人事やな」

「仕事で会うんとちゃうん?」

「あー……、その前に北さんの結婚式で会うな」

「ほんま!? 俺も会えるやん」

「ツムも一緒に謝れや?」

「髪黒にしてこか?」

「やめれや」

 ビールをひと口飲んで、またカウンターに突っ伏す。口の中に苦味が広がって、今の俺の心みたいだな、と思った。彼女のことを想いながら、ただ酒をあおることしかできなかった。