〜side OSAMU〜
「完っ全に振られましたわ、俺……」
次の月曜日。おにぎり宮が店休日のその日に、行きつけの居酒屋に北さんを呼び出した。理由はひとつ。恋愛が上手く行っている彼に、自分の恋の相談をしたかったからだ。
目の前にいる北さんは、顔をしかめながら焼酎をひと口啜った。俺の方が体はデカいのに、どうにも威圧感があるのは変わらない。北さんは俺を憐れむような目で見ながら口を開いた。
「なんや、飯にも誘えんのか?」
「誘いましたよ。逃げるように帰られたんです」
「照れてただけとちゃう?」
「北さんはどうやって後輩ちゃんと上手く行ったんですか? 教えて下さいよ」
「んー、酒飲ませて酔わせて襲ったな」
「ちょ、北さんほんまに俺の知っとる北さんですか?」
「それはこっちのセリフや。お前ほんまに俺の知っとる治か? もっとチャラかったやろ」
「いつの話ですか」
「高校で二桁はヤっ……」
「ヤってませんて!」
確かに高校の頃の自分はチャラかった。告られては付き合いを繰り返し、たびたび彼女が変わっていた自覚もある。すぐ手ぇ出しよったし。今のこんな腑抜けた面見たら、ツムにバカにされるんやろなぁ。
それよりも、北さんとそういう話をするのは初めてな気がする。この前のLINEを見てしまったことは話題に出さない方がいいのだろうか。酒飲ませて襲ったっていうのは、その時のことなんだろうか。
「〇〇ちゃん、可愛かったなぁ」
「のろけですか?」
「あの子、いつもスカートやねん」
「そーですか。ミョウジさんはいつもパンツスーツですわ」
「あんなん、襲えって言ってるようなもんやろ。足出して。せやからな、ミョウジさんがスカート履いてきたらそん時や」
「酒飲ませて襲えと?」
「チャラい治くんならそれくらい出来るよなあ?」
にやにやと笑う北さんに何も言えずにいると、スマホの通知がブブッと鳴った。ショートメッセージだ。差出人は……、ミョウジさんや!?
「っ、ミョウジさんからメールや!」
「まだLINEも交換してへんのか?」
「えっと、『この前はいきなり帰ってごめんなさい。今度ご飯ご一緒しましょう。いつがお店休みですか?』やて!」
「ええやん」
急いで店休日の日程を送りつける俺を見て、北さんが爆笑している。爆笑している北さんなんてレアもんや、と思った。恋は人を変えてしまうというけれど、それは北さんだけじゃなくて俺もそうなんかもしれんな。こんな風に、恋愛に慎重になるのは初めてや。
一目惚れやったんや。ほんま好きなんや。ミョウジさんのこと。
結局その日は北さんに奢ってもらって、ほろ酔いで帰宅した。ミョウジさんとは二週間後の月曜に会うことになり、俺は気合いを入れて髪を切りに行った。
ほんま、なんやねん俺。もっとチャラかったのにな。
そんなことを思いながらもミョウジさんのことを考えると胸が高鳴って、スキップしてしまいそうなほどに浮かれていた。彼女との進展を願いながら。