チュンチュンと小鳥のさえずる声で目が覚める。開けていく視界にうつるのは、昨日の夜私たちが脱ぎ捨てた服たちと、丸まったティッシュの残骸で。それがやけに生々しくって、冷えていた身体が急激に熱を帯びていくのが分かった。
ああ、また流されちゃった。
「〇〇ちゃん、おはよ」
「おはようございます……」
「なんや、元気ないな?」
上半身裸のままで私のベッドに寝そべっている北さんを、ちらりと横目で見る。私は急いで下着を身につけて、新しい服に着替えた。
「〇〇ちゃん、もう着替えたん? まだ七時やで?」
「……」
「朝はもう、せぇへんの?」
「しません…っ…!」
「〇〇ちゃん疲れた? ごめんな、がっついて」
「……もう、しませんから」
「〇〇ちゃん?」
「私もう、北さんとそういうことしませんから…っ…」
ここははっきりと伝えなくちゃいけない。この気持ちが何なのか分からないまま、ずるずると身体の関係を続けるわけにはいかないのだから。
私の様子がおかしいと分かったのか、北さんの顔が真面目なそれになる。
「〇〇ちゃん、どしたん? 話してみ?」
そう優しく言われたら、自然と涙がこぼれてきた。止めようとするけれど、ぽろぽろと溢れて止まらない。な、なんで泣いてるんだろう、私。
「な…っ…、どないしたん!?」
「ひっ、えっ、ひっく」
「俺にアカンとこあったなら言うて」
「北さんのせいじゃないんです…っ…」
「じゃあ、なんで……」
「いけないと思うんです……」
北さんが私のそばに来て、指で涙を拭ってくれる。その温もりが優しくて、ますます涙が溢れてきた。北さんの指が、私の涙で濡れていく。
「わ、わたし、北さんのこと……どう思ってるのか分からないのに、そ、そういうことして……」
「ん」
「申し訳ないし、ますます自分の気持ちが分からなくなって…っ…」
「うん」
「いけないと思ったんです……」
「そか。ありがとな、話してくれて」
「……」
北さんがそう言って、もう一度私の目元を拭ってくれる。そして私の目を見て、予想もしていなかった言葉を口にした。
「じゃ、しばらく会うのやめるか?」
「え……?」
「言うても、九月の連休辺りには収穫に入っとるから、仕事で会うやろけど」
「……」
「しばらく会わへんやったら、『気持ち』いうのも分かるんちゃう?」
「……」
寂しい、と思ってしまったのはなぜだろう。けれどもそれが正しいことのような気がして、私はいつものように「分かりました」と彼の提案に乗ることしかできなかった。胸の奥が不気味な音を立てる。
「ほな、また仕事で会おうな」
そう言って北さんは帰って行ったけれど、昨日の服や歯ブラシは置かれたままで、彼の存在をいやでも思い出してしまった。
仕事で会うのは、九月の下旬。まだ一ヶ月も先のことだ。
胸の奥にぽっかりと穴が空いたような気持ちになるのがどうしてだか分からずに、私は脱け殻のような日々を過ごした。