それから私たちは街をぶらぶらしたり、ショッピングをしたり、色々うろついてるうちに夜になって、外で夕飯を食べて帰った。もちろんお酒は飲んでいない。北さんは一杯だけ飲んでいたけど。
うちに帰り着いた頃には足がくたくたに疲れていて、眠気がどっと襲ってきた。これは、とても夜のイチャイチャは出来ないくらい北さんも疲れてるのでは!? なんて、またそういうことを考えてしまう。
今日は絶対、しないんだから!
「〇〇ちゃんの部屋、可愛らしいなぁ」
「散らかっててすみません」
「どこが散らかっとるん? 〇〇ちゃんらしい部屋やん」
「もの多いし……。片付けないとなぁって思ってるんです」
「〇〇ちゃん、先風呂入る?」
「お風呂…っ…!?」
「いっしょ、入ろか?」
「いえっ! ひとりで入れますからっ! 北さんお先にどーぞっ!」
「じゃ、今度はふたりで入ろな?」
はっ、いけない! いけない!
また北さんに流されかけてる自分がいる。お風呂上がったら、きっと触れられるんだろうなぁ。どう断ろう。断りきれるのだろうか。
だって、私はまだ北さんのこと好きなのか分からないんだもの。そんな気持ちなのに深い関係になったらいけない。北さんにも申し訳ないし、自分の気持ちがますます分からなくなる。
そんなことを考えている間に、北さんはささっとお風呂から上がっていた。私も急いでお風呂に入って、念のためムダ毛チェックなんかをしてから、ばーっとシャワーを浴びてお風呂から上がった。
お風呂から上がると、洗面所に見慣れないものが置いてあるのが目に入った。私のピンク色の歯ブラシの横に立てられた、水色の歯ブラシ。
し、し、侵食されてる!?
「〇〇ちゃん。俺の着とった服と下着、洗濯機に放り投げたけど、置いとってええ?」
「ひぇ!?」
「今度来た時の着替え用」
「は、はぁ……」
「9月10月は忙しくなるし、あんまし来られへんかもしれんけど」
「そ、そうですか……」
「〇〇ちゃん、おいで」
狭いワンルームの隅に置かれたベッドに、北さんが腰をおろす。ひょいひょいと手招きされたら、自然と足がそちらへと向かった。
北さんの隣に腰をおろすと、そっと腕を回された。ぎゅーっと抱きしめられて、私はまた心臓がばくばくしはじめるのを感じる。
流されない。絶対流されないんだから。
「〇〇ちゃん」
北さんの指が、私の唇に触れる。目と目が合って、しまった、と思った。なんで目を合わせてしまったんだろう。
唇が唇に吸い込まれていく。ちゅ、っとリップ音が鳴って、はむ、っと唇を食べられた。自然と唇が開いて、舌先が触れ合う。北さんの手が、私のお腹をするりと撫でた。
「だっ、だめ…っ…」
「あかんの? 俺、したくてしゃーないねんけど」
「えっと」
「あ、出来ひん日?」
「違……、ぁ」
その手があったか、と思った時には既に遅し。違う、なんて口走ってしまったから、もう嘘はつけない。
「じゃ、ええやん、な?」
「ま…っ…、ひゃぁ、っ」
「〇〇ちゃん、好きやで」
私は言わない。絶対好きだなんて言わない。
だって、分からないんだもん。
北さんは絶対『好き』って言わせる、なんて言ってたけれど。こんな未知の感情に名前をつけられる日なんて、来るとは思えない。
これまでしてきた『恋愛』だと思ってきたものとは、なんだか全然違うんだもん。身体が熱を帯びて、飛んでいってしまいそうな気持ち。
この気持ちは、一体なんなんだろう。
結局その夜はドロドロになるまで何度も抱かれてしまって。また流されてるじゃん、私、なんて思った。
朝になっても身体は熱いままで、心臓は心ドキドキしたままで。本当に変になっちゃったのかなって心配になった。
ねぇ、北さん、でもね。
やっぱり、このままじゃいけないと思うんです。