「どうなってんの!? 一体」
帰りの車内では、想像通り先輩からの質問攻めトークが炸裂していた。青々とした田んぼに囲まれた道を、軽自動車はのろのろと走っていく。
「し、知りませんよぉ。ご飯に誘われただけです~」
「だから、それが凄いのよ! あの北さんだよ!? 山田さんとか佐藤さんとか、何回もこっちから誘ってるけどかわされてたんだからね!?」
「はぁ……」
「は~、北さん、〇〇ちゃんみたいな子がタイプなのか~」
「そんなんじゃないですって」
そんなんじゃない、たぶん。気に入った発言だって、仕事相手としてって意味なんだと思う。ご飯もコミュニケーションのためだと考えれば、不思議ではない。
「ご飯、絶対行くんだよ!?」
「はぁ……」
「どうなったか教えてね!」
結局その日は帰ってから写真をまとめたり、企画を詰めていったりとバタバタしていて、ご飯の約束のことはすっかり頭から抜けていた。新人だもの。浮わついた気分でいる暇なんて、私にはない。
そうこうしているうちに夜になり、フラフラになって帰宅しベッドに着地した頃、ようやく社用スマホの通知が光っていることに気がついた。相手の名前を見た瞬間、変な緊張感が身体を駆け巡る。
「きっ、北さんからだ!」
どっどっと胸の奥が音を立てるのが分かる。北さん、何の用事だろう。今日のお礼かな?
そんなことを考えながら、スマホをタップする。表示されたメッセージは、私が想像していた文章にプラスアルファが乗せられたものだった。
『今日はお疲れ様です。ありがとう。これからよろしくお願いします。ほんで、〇〇ちゃん。今週末ご飯行かへん?』
来た、ご飯の誘い。会社に帰ってから山田先輩と佐藤先輩も加わって、絶対断るなと念押しされたことを思い出す。
『北さん、こんばんは。お疲れ様です。本日はありがとうございました。ご飯、是非ご一緒しましょう』
少し硬めの文章で返事を打ち、メッセージを送信する。きっと、深い意味はない。これから大きな企画を担当するんだもの。親睦を深めましょうって、きっとそういう意味だと思う。すっかりちゃん付けで呼ばれているけれど。
この時私は知らなかった。『真面目でお堅い』北さんからの猛アタックは、予想以上のものになることを。