そのあとは北さんのご両親や親戚の方々が手伝いにいらして、後輩ちゃんの紹介なんかしはじめて。そうしたら北さんのおばあちゃんに、「こっちは治ちゃんの彼女さん?」なんて聞かれたので咳き込んでしまった。宮さんがなんと答えたかというと、「これからです」のひと言。そのひと言だけで私は胸がきゅんとなって、どうにかなってしまいそうだった。
そうこうしているうちに、あっという間に訪れた夕暮れ。そろそろおいとまします、と北さんに挨拶すると、北さんは「治、ミョウジさん、ありがとう。またな」とお礼のお米を渡してくれた。
「あれ? 私は?」と、北さんの隣で固まっている後輩ちゃん。北さんは、「○○ちゃんは今日泊まっていくもんな?」と言ってにやりと笑っている。
「よかったじゃん。ラブラブ出来るね」
まだ先輩モードを保っておかねば! と思いながらそう伝えると、後輩ちゃんはますます顔を赤らめて固まってしまった。ちょっとからかいすぎたかな?
宮さんの車に乗り込んで、窓を開けて後輩ちゃんと北さんに手を振る。ふたりの姿が段々小さくなって見えなくなった頃、ふーっと安心して溜息をこぼした。
「どうにか、上手く行きましたね。宮さん、ありがとうございました」
「こちらこそです。先輩の一大事でしたから」
あ、そういえば……。今、ふたりっきりなんだ。
そのことに気がついて、不自然に黙ってしまう。オーディオからは行きがけに聴いたラブソング。ねぇ、この恋の答えを知りたいの。そんな歌詞が聞こえて、顔を上げてはいられなくなった。
「……ミョウジさんは、答え合わせしたいですか?」
窓の外には、黄金に光る田園風景。それが少しずつ小さくなっていく。
こたえあわせ。こたえあわせって、恋愛の、ってことだよね。そんなの、したいに決まってる。
無言でこくり、と頷くと、宮さんはふーっと息を吐いて、左手でぱちんと自らの頬を叩いた。
「俺、ほんまミョウジさんのことになるとダサいねん」
「……そんなこと、ないですよ」
「ミョウジさん」
「はい」
「……好きです」
伝えてほしいことがある。知りたいのはあなたの気持ち。イヤなんて言わないから、はっきり言葉で伝えてほしい。その願いが今叶って、私は知らないうちに泣いていた。
「……っ、ぐすっ」
「どないしたんですか!?」
「嬉しくて……」
「言うの遅くなってすみません」
「……今日、〇〇ちゃんと北さんの応援するはずだったのに、ずっと宮さんのこと考えてました」
「ほんまに?」
「こんなダメダメな先輩でも、いいですか?」
「そんなん嬉しすぎるやろ? 今すぐ抱きしめたいわ」
「……わたしも好きです」
山道に入っていた車が、登坂用に広くなったスペースへと潜り込む。車のスピードが緩やかになって、ハザードランプが点灯した。ゆっくりと踏まれるブレーキと、停まった瞬間に近づいてきた宮さんの顔。ぎゅっと抱き寄せられて、唇に温もりが触れた。わたしたちの周りだけ湿度が高くなって、真夏に戻ってしまったみたいだ。
「みやさ…んっ…」
「好きや」
「…っ…、は…っ…」
「好きや好きや好きや」
唇に何度も触れる熱。宮さんの唇は熱くって、きっと私の唇も熱くって。ざらついた舌が口内に入ってきて、粘膜をなぞられた。
「俺んち……、行きましょか?」
それが何を示しているのか分かっていて、こくりと頷いた。オーディオの曲が変わる。次に流れ始めた曲は、永遠の愛を誓ったウェディングソングだった。