それからの日々は、仕事が忙しすぎてバタバタと走り回っているだけだった。宮さんとは時々LINEでメッセージのやり取りをしたけれど、付き合おうとかそういう話にはならなくて。今の私たちの関係が一体何なのか、モヤモヤする日が続いていた。
次の取材は新米が届いてからだ。それまでは会う予定もないので、余計にモヤモヤしてしまう。そうなんだよね。付き合おうって、言われていないんだなぁ。
後輩ちゃんが抜け殻のようになっていたのは、ちょうどその頃のことだった。どうやら、北さんと会うのをやめたらしい。理由は、後輩ちゃんが北さんのことを好きなのか分からないうちに付き合って、身体の関係を持ってしまったからだという。彼に申し訳なくなって、しばらく会わないと決めたみたいだ。
「〇〇ちゃん、脱け殻みたいになってるよ?」
「せんぱいぃ……! わたし、どうすればいいんでしょう!?」
「北さんと会うのやめたっていうアレ?」
「あれから毎日北さんのこと考えちゃうし、なぜだか寂しいっていうか、北さんどうしてるかなとか……」
「でも、別れたわけじゃないんでしょう?」
「別れたわけじゃないけど、似たようなもんですよぉ。北さん、元気かなぁ。もう私のこと、どうでもよくなってるかもしれませんんん……」
「〇〇ちゃん、北さんのこと大好きじゃん……」
「え? なんて言いました? 聞こえなかったです」
なんだこの子、北さんのこと大好きじゃん。んあ〜、じれったい!!!!
後輩ちゃんや部下のことになると、世話焼きになってしまう自分がいる。あーもう、これ、協力してあげないと気がつかないんじゃない?
その時、我ながらいい提案を思いついてしまった。これってもしや、とても素晴らしい作戦なのでは!?
「……〇〇ちゃんってちょっと天然なとこあるよね。……あ! ねぇ〇〇ちゃん、今度の最初の連休、暇?」
「暇人すぎて予定も何も入ってませんんん」
「ちょっと、待ってて。一件電話してくる」
スマホを片手に席を立ち、小走りで廊下へと向かう。数回鳴ったコール音のあとに、やさしい声がきこえた。宮さんだ。
「ミョウジさん? どないしたんですか?」
「宮さんこんにちは! 急にすみません。今、ちょっとお電話大丈夫ですか?」
「ええですよ」
「今度の連休、北さんのところで稲刈りのお手伝いするって言われてましたよね!?」
「そうですよ。連休の初日です。毎年手伝うてるんで」
「それ、私と苗字も手伝いに行っていいですか!?」
後輩ちゃんはきっと、北さんに会えば気持ちを確信するんじゃないかと思う。私には分かる。会ってしまえば、認めてしまえば加速していく気持ちを、私は知っているから。
電話の向こうから、宮さんの優しい声が届く。
「もちろんです。……あ、もしかして、あれですか? 苗字さんと北さんが会うてへんっていう」
「聞いてましたか!」
「はい。そういうことなら、協力しますわ」
「ありがとうございます。また後ほどLINE送りますので……!」
よし、これで後輩ちゃんと北さんが会うことになる!
……っていうかもしかして、これって私と宮さんも会っちゃうんだよね!? ええええ。どうしよ。どんな顔して会えばいいの!?
恋する気持ちは止まらない。認めてしまえば加速していくし、近づくたびにもっと好きになる。会えば会うほど、その気持ちは膨らんでいくものだ。
どうか後輩ちゃんと北さんが上手く行きますように。ついでに私と宮さんも何か進展がありますように!
そんなことを毎日祈っているうちに、連休の初日が訪れていた。