※『いい加減諦めればいいのに』の続き
※次の長編はここからの派生だけど別物。
なんでこうなったのか分からない。でもたぶん、きっと、いや絶対に自分のせいだとは思っている。
天気は快晴。夏休み一日目の部活終わり、『お試しの彼氏』になった幼馴染と並んで帰っていただけのはずだった。暑さが苦手な彼に「ちょっと休も」と声をかけられて、日陰にあるベンチに座った。……だけのはずだった。
17と書かれたアイスクリームの自販機のボタンを、研磨の手がぽちっと押すのを見つめる。鉄朗と比べてばかりいたけれど、私よりもだいぶ大きな手をしているんだな、なんてぼんやりと思った。
先程『彼女』とふたりで帰っていた、私の初恋のひとのことを想う。まだ好きなのかなんて、分からない。先日『お試しの彼氏』になった、今隣にいるひとのことはもっと分からない。
自分の気持ちがなんで分からないのかなんて、もっともっと分からない。だって今、私は少なからずドキドキしているからだ。
「ひと口食べる?」
「……なんで真夏にチョコ系? シャーベットがいい」
「じゃー名前が買えばいいでしょ」
「今日お財布持ってきてないもん。研磨が奢ってよ。口の中カラカラ」
きっと今日は三十五度超えの気温。暑すぎてとろけてしまいそうになる。ぱたぱたと胸元を扇ぎながら、快晴の空を見上げた。
「そーいう無防備なの、本当やめて」
聞こえてきた声をの方に、少しだけ顔を傾ける。無理、そーいうの。続けてそう聞こえたあとに、ふにっと唇が柔らかいもので覆われた。
「ね、まだクロのこと好き?」
「……分かんない」
なんでこうなったのか分からない。でもたぶん、きっと、いや絶対に自分のせいだとは思っている。事実はどうであれ、今私は完全に鉄朗のことを忘れていた。速まる鼓動は、何を表しているのだろう。
「じゃ、おれの勝ち」
なんて言って微笑まれたらもう、ただの幼馴染ではいられない。『お試しの彼氏』を了承したのだって、たぶん私の気まぐれなんかじゃない。少しでも気持ちが傾いてしまったからだと思う。
たぶん、今、九十度よりもっと傾いたところ。一八〇度までひっくり返してみせてよ。
夏が終わる頃には、きっときみの完全勝利になる。