火星の裏側で抱きしめてⅢ
あれから。研磨くんは一ヶ月ほどゆっくり過ごして、九月からKODZUKENの活動を再開することになった。
休んでいる間に後期で履修する予定だった『仏語2』のレポートを提出して、特別に第二外国語の履修を完了させることが出来た。卒業レポートも終わらせたので、春には卒業確定だ。本人は「休みなのに全然休めなかった……」なんて言っていたけれど。
研磨くんと私が付き合いはじめたことは、私の友達はもちろん、ルナさんにもあかねちゃんにも、それから研磨くんの友達全員にも知られてしまった。研磨くんはだいぶ照れくさかったみたいで、からかうクロさんにいじられていたっけ。
あかねちゃんとはバレーボールのコラボ試合を見に行った。セッターって凄いんだなぁ、研磨くんのも見てみたいな。そう言ったら、あかねちゃんがバレーボールの試合をしている研磨くんの動画を見せてくれて、お腹を抱えて笑った。だって、あんなに体力ないって言っていたのに、めちゃくちゃうまいんだもの。
ルナさんはコヅケン以外のユーチューバーともコラボ動画を始めて、どれも人気を博している。ぜんぶ天才的に面白いから、彼女って本当に凄いなぁって思うんだ。
それから、私たちの考察動画その2。これも評判が凄かったけれど、研磨くんの「恋愛と仕事は分けたいから」のひと言で第三弾の計画はストップ。私の研磨くんのところでのアルバイトも終了したけれど、問題なんてひとつも無い。だって、これからはいつでも会えるのだから。
「ね、また好きって言って?」
「……言わない」
「私は言うよ? 好き! 好き好き好き好き大好き!」
「分かったから!」
「分かったから何!?」
「……好き」
あれから火星は遠ざかっていって、肉眼では見えなくなってしまった。けれども私たちは隣にいて、いつでも触れ合うことが出来る。
ねぇ、研磨くん、好きよ。大好き。
手と手を握る。皮膚と皮膚が触れ合う。それは、たしかな愛の証。
手を繋いだまま、ふたり今日も星空を見上げる。さぁ、今日は何の星座が見えるかな。
ーーきみの好きな星は何?
今日も、きみが好き。