仕事を終え外に出ると、外はすっかり暗くなっていた。冬の夜は暗くて寒い。冷たさが空気を透明にしてくれるおかげで、夜空はとても澄んでいる。星空が綺麗だな。あなたにも見せたいな。そんなことを思っていたら、駐車場の影に見慣れた姿を見つけた。
「えっ? 蛍くん!?」
「……たまたま他の店に用があったから」
どうやら彼は、私が働いているショッピングモールの他のお店に用事があったらしい。そうだとしても、私を待ってくれていたという事実が嬉しくてたまらなかった。
「待っててくれたんだ。ありがとう」
「ちょうど閉店時間だったから待ってただけでしょ。行くよ」
「どこのお店行ってたの?」
「CD見に来ただけ」
「今日大学は?」
「夕方の講義だけだったけど」
「へぇ〜。じゃ、午前中来れたんじゃん? わざわざ私のために遅い時間に来てくれたの?」
「たまたまだから。君のためじゃないし」
こういう時蛍くんは、『たまたま』を連呼する。けれども本当は、私のためにわざわざ待ってくれていたんだと分かるんだ。寒い中待ってていただろうあなたの鼻は真っ赤になっているし、繋いだ手だってとても冷たいのだから。
「ね、今日星すごいね」
「前向いて歩いた方がいいんじゃない?転けるよ」
「蛍くんに見せたかったんだよ」
そこまで話すと、蛍くんは駅とは違う方向へと向かって歩き始めた。「どこ行くの?」と聞いてみるけれど、返事はない。緩やかな上り坂を無言のまま、早足で歩く。段々と繋がれた手が温かくなって、汗がじんわりと滲むのが分かった。
たどり着いたのは街を見下ろせる小さな公園。誰もいない静かな空間からは、街の灯りが見下ろせる。それはまるで宝石箱みたいに、きらきらと輝いていた。
「すごい……。こんなとこ知ってたんだ」
「ここならじゅうぶん見渡せるでしょ」
「うん。すごい夜景だね」
「そうじゃないし……、上」
彼に言われて空を見上げると、そこには満点の星空が広がっていた。街中を歩いていた時よりももっとはっきりと、澄んだ冬の夜空に散りばめられている星空たち。これだ。この光景を、蛍くんにも見せたかったんだよね。そう思った。
「……僕も」
「?」
「君のために見せたかったから」
「えっ!?」
「ごめん忘れて」
ずるい。本当にずるいよ、蛍くん。さっきまでたまたまだとか、君のためじゃないだとか言っていたくせに。たまにこうして、本音を言われるものだから私の胸はどうしようもないくらいに高鳴ってしまう。蛍くんの方を向けば、彼は鼻だけでなく頬まで赤くして私を見つめていた。
「蛍くん、なんで空見てないの?」
「……べつに」
「私の顔見てたでしょ!?」
「そんなんじゃないから」
「ふふっ、照れてる」
からかうようにそう言うと、頬をぷにっとつねられた。目と目が合って、唇同士が触れ合う。雪が降りそうな寒空の下だけれど、私たちはくっつき合っているからとても温かい。
ねぇ、蛍くん。大好きだよ。ずっと一緒にいようね。そんなことを願いながら、彼の腕に抱かれる。冬の夜のことだった。
※ワーパレお借りしています。君のため/灯り/冬の夜空
キャラリクありがとうございました!