あまくてにがくて青い24【完結】

 それからまた少し時が経った。影山くんの『ライバル』日向くんとの試合も観戦に行ったし、時々東京にも遊びに行った。彼が宮城に帰ってきた時は毎回会ったし、離れている間もメッセージや動画通話でやりとりをした。時代は進化したし、私たちの行動範囲も広がった。思っていたよりも、遠距離恋愛は楽しいものだったらしい。

 本当、不安だったんだよなぁ、あの頃は。

 錆びた赤色の自転車は、実家の隅に停められたままで、あの自転車置き場には卒業してから行っていない。それでも季節の匂いをまとった風が吹くたびに、きみと過ごしたあの日々を思い出す。そして、これから巡ってくる季節のことを考えると、嬉しくなるんだ。

 もう、思い出を作ることは怖いことじゃないから。

 空を見上げる。空気を吸い込んで、思い切り吐き出す。隣を向けば、愛しいきみが私の方を見て笑った。

 彼の左手には、きらりと光るシルバーのリングがひとつ。私の薬指にも、お揃いのそれが輝いている。

 私は来月、イタリアに旅立つ。愛を誓った薬指のリングは、私たちの未来を照らしている。