体育祭で澤村大地の策略にハマってまんまと惚れる

 澤村大地とは真っ直ぐで、真面目で、漢気のある人だとそう思う。同じ教室で過ごしている時からそう思っていたけれど、こうして一緒に体育祭を過ごしていると余計にそう思うようになった。
 私と澤村はどうやら縁があるようで、体育祭準備の時からよく顔を合わせた。先生に頼まれた荷物を運ぶ係でペアになったり、二人三脚のペアになったり、有志が少ないからとくじ引きで決めた応援団が一緒になったり、ラストのフォークダンスで手を繋いで歩くペアになったりと、何度も顔を合わせていた。その度に澤村は「また苗字か、よろしくな」と笑って挨拶してくれたから、私も他の知らん男子じゃなくて澤村でよかったな、と思うくらいの存在にはなっていた。好きとかそんなんじゃないけど。
 だから、フォークダンスの直前でペアが変わった時は少しがっかりしたんだ。欠席者の関係で女子がふたり余るから、苗字が男子役をしてくれと、先生に頼まれたその瞬間。澤村と踊れないじゃん、と思ってしまう自分がいたのだ。

 苗字名前とは、純粋で素直で、何の疑いもなく俺を見てくれる人だとそう思う。同じ教室で過ごしている時からそう思っていたけれど、こうして一緒に体育祭を過ごしていると余計にそう思うようになった。
 俺と苗字は縁があると思い込んでいるようで、体育祭準備の時からよく顔を合わせた。先生に頼まれた荷物を運ぶ係でペアになったり、二人三脚のペアになったり、有志が少ないからとくじ引きで決めた応援団が一緒になったり、ラストのフォークダンスで手を繋いで歩くペアになったりと、何度も顔を合わせていた。その度に「また苗字か、よろしくな」と挨拶する俺に向かって、「私たち縁あるね」なんて純粋に笑う苗字が眩しかった。好きだ。好きすぎてなんだか申し訳なくなってくる。苗字はたぶん俺のことを誤解しているし、まさか全て俺の策略でペアにされているだなんて微塵も疑っていないのだから。
 だから、フォークダンスの直前でペアが変わった時は少しホッとしたんだ。欠席者の関係で女子がふたり余るから、苗字が男子役をしてくれと、先生に頼まれたその瞬間。苗字を騙していた後ろめたさから、逃れられた気がした。

 ラブソングが鳴り響く。好きだとか、全てをかけて誓うよだとか、そんな甘ったるい歌詞が耳に届いて、私は顔をしかめた。こんな、誰にでも刺さるようなラブソングが流れているというのに、私は今フォークダンスで男役をつとめている。ペアとなった女の子と手を繋ぎながら、その子に「なんで名前男子役なの?」と笑われた。
「あはは、女子が余ったんだって」
「えー! カッコイイ! 私名前と付き合おっかな!」
 そんな私のふたつ後ろを歩いているのは、本来ペアじゃない子と手を繋いで歩いている澤村だ。本当だったら、私とふたりで歩いているはずだった。じきにダンスが始まって、その子と澤村は踊るのだろう。好きじゃないはずなのに、うつむいてしまうのはなぜだろう。分からないけれど、澤村とその子の会話に耳を傾けてしまう自分がいる。
 何を話しているんだろう。耳をすませたその瞬間、入場曲のラブソングが止まった。
「……なぁ、頼みがある」
 澤村の声が聞こえる。ペア残しがうん、と頷いて、また澤村の声が響いた。
「頼む! 苗字と男役交代してくれ!」
 ん?
 んんんんん!?
 いま、なんて言った!?
 爆笑しながら「いいよ」と答えてくれた女の子に向かって、澤村が手を合わせて謝っている。「ハイ、リア充は交代ね〜!」と私にハイタッチしてきた女の子に、背中をトンと押された。弾みで飛び出してたどり着いたのは、澤村の向かいにある空いたスペースだ。顔を上げると、真剣な目で真っ直ぐにこちらを見る彼の姿。何かを謝っているかのように、こちらに向けて手を合わせている。
「苗字! 俺と踊ってくれ!」
 ンンンン!? 私!?
 しかし、私の耳に届いたのは、踊ってくれのひと言だけじゃなかった。周りに聞こえる大きな声で、澤村が続ける。
「苗字のことが好きだ!」
 えっ!? えっ!?
 いま、何を言われたの!る
「正直、全部苗字とペアになるように工作したのは俺だ! ありとあらゆる手を使って!」
「そうなの!?」
「ああ! このフォークダンスのラブソング選んだのも俺だ!」
「ええ!? それもなの!?」
「俺は苗字が思ってるような男じゃないけど、これだけは言える! 苗字のことが好きだ!」
 まさかの。あの澤村大地が裏工作働いてまで私と接触したがっていたとは、誰が想像しただろうか。フォークダンスの音楽は始まらないし、みんな見ているしでどうすればいいのか分からない。分からなさすぎる。けれども澤村があまりにも真っ直ぐに言うから、私も覚悟を決めることにした。いいよね、体育祭の日くらい。
「澤村は男らしいね」
「裏工作するような男なのにか?」
「うん! そういうところも、ぜんぶ含めて好きになったみたいなんだけど」
 フォークダンスの音楽が鳴り始める。まるで私たちを待っていたかのように、メロディが踊りだす。
「改めて、俺と踊ってくれるか?」
「はい!」
 歓声に包まれながら、私たちはラブソングのイントロ部分を一緒に踊った。澤村大地とは真っ直ぐで、真面目で、漢気のある人だとそう思う。同じ教室で過ごしている時からそう思っていたけれど、フォークダンスで告白されて、より一層そう感じるようになった。加えて芽生えたのは、私から彼に向けての恋心。自覚したばかりだけどさ、これだけは言えるよ。
 私はきみのことが好き。

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